誰もが楽しめるインクルーシブなスポーツ〈ピックルボール〉
昨年の5月、HERENESSのメンバーはNYに渡り、グローバル用の撮影を行った。その時に不思議な光景に出合う。ハドソンリバーの桟橋に面したスポーツ公園に何面ものコートがならび、テニスとも卓球ともつかない不思議なスポーツに老若男女が興じているのだ。調べてみるとそれは、〈ピックルボール〉というスポーツだった。アメリカでは大人気のラケットスポーツで、2022年にはプレイヤー人口が倍増し、過去3年間で159%の驚異的な伸び率を記録しているという。どうして〈ピックルボール〉がそんな人気を獲得しているのか。その魅力と可能性をお伝えする。
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誰でも簡単に始められる。ピックルボールが持つ「敷居の低さ」
ピックルボールが多くの人を引き付ける最大の理由は、誰でも簡単に始められるというアクセシビリティの高さにあるようだ。ピックルボールでは、穴の空いたプラスチックのボールを打つので、弾みが少なく、空中をそれほど速く飛ぶことはできない。それにパドルはテニスラケットより短くて軽いから、扱いやすい。また、ピックルボールでは打ちやすく返しやすいアンダーハンドでサーブを打つ。つまり、ピックルボールはテニスよりはるかに早く習得し、プレーを楽しむことができる。
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また、コートサイズの小ささも、ピックルボールの魅力を生み出す要因かもしれない。プレーヤー同士の距離が近いため、ラリーの合間に会話を楽しむことができる。運動不足の人でもあまり動かなくていいので、体力に自信のない友人でも誘って一緒にプレーできる。仲間を作ったり、その関係を深めたりするのにぴったりのスポーツのようなのだ。
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*今回の撮影は、フルサイズのテニスコートで行ったが、本来のピックルボールのコートサイズは縦13.4M × 横6.1Mでバドミントンのダブルスと同じ。ネットの高さも中央で86.4cmとやや低い。テニスコートに補助線を引くためのアイテムなども市販されている。
科学的にも実証されたピックルボールの健康効果
ピックルボールは楽しいだけでなく、健康面でも大きな効果が期待できるスポーツだといわれている。ニューヨーク・タイムズ紙の記事によると、ウェスタン・コロラド大学の研究チームが行った調査で、ピックルボールが「中程度の強度の運動」に分類され、1時間のプレーで平均約354キロカロリーを消費することがわかった。被験者のピックルボール愛好家たちは、1時間のプレーで平均心拍数が109に達し、6週間のプログラムを終えた後には、コレステロール値、血圧、有酸素運動能力が大幅に改善したとのこと。
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また、Appleとブリガム・アンド・ウィメンズ病院がApple Watchのデータを基に共同で行ったApple Heart and Movement Studyでは、ピックルボールが体と心に良い影響を与えるという興味深い結果が示された。ピックルボールのワークアウト時間は平均90分で、平均ピーク心拍数は一分間に143拍だった。これはテニスとの比較では、ピックルボールの方がプレー時間が長く強度はやや低い。ピックルボールは中強度の運動を長く続けられる傾向にあり、健康への効果が期待できる。
また、抑うつ気分を示唆する指標が一般の被験者層と比べ、頻繁にピックルボールをする人では60.1パーセントと低かった。心の健康状態に潜在的にピックルボールが役立つといえそうだ。
こうした科学的なデータからも、ピックルボールが単なる流行のスポーツではなく、健康づくりに役立つ本格的な運動であることがわかる。
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駆け引きと戦略が試される奥深さ。ピックルボールプレイヤーが語るピックルボールの魅力
今回、HERENESSの〈SUGARCANE SHORTS〉のモデルをつとめてくれたのは、テニス界からピックルボールで世界を目指す三好健太選手。三好選手は、元プロテニスプレーヤーである吉冨愛子選手とともに夫婦でピックルボールのプロを目指し、積極的に海外の試合にも参加している。
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「初めてプレーして感じたのは、ボールの音。カーンという音が心地いいなと思ったんですよね。それにピックルボールは本当に奥が深いスポーツ。ネット際のドロップショットは、どのくらいの距離を出すか、相手の足元を狙うかなど、細かい駆け引きが要求されます。体力も必要ですが、それ以上に経験と戦略、知的な読み合いが重要になってきます」と、その爽快さと知的なゲーム性についても教えてくれた。
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また、他競技との横のつながりという面白い副産物も楽しんでいるそうだ。
「ピックルボールの面白さは、テニスだけでなく卓球やバドミントンなど、他競技の選手とも交流できることですね。みんなで楽しくプレーしながら、いろいろな駆け引きを学べるのが魅力です」
日本ではまだ環境が整っていない部分もあるが、三好選手のような才能が世界で活躍することで、ピックルボールはさらに広まっていくだろう。「テニス界のパイオニアとしてピックルボールの魅力を伝えていきたい」という三好選手からは、ピックルボールへの熱い情熱が伝わってきた。
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多様な人々をつなぐ。ピックルボールが作る新しいコミュニティ
ピックルボールは、老若男女問わずあらゆる人が楽しめるスポーツ。米国では子どもからシニアまで、世代を超えてピックルボールを通じた交流が生まれている。共通の趣味を介することで、普段は接点のない人々が自然と笑顔で会話を交わす。そんな心温まるコミュニティがピックルボールにはあるようだ。
特にHERENESSがピックルボールに注目する理由は、年齢、性別、国籍、運動神経の差を問わず、誰もが楽しく参加できるインクルーシブなスポーツであること。HERENESSでは、今後もピックルボールというニュースポーツが日本のコミュニティに新しい風を吹き込み、多様な人々の交流を生み出すことを期待してレポートを続けます。
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〈着用アイテム〉
身長:180cm
COTTON×SILK T-SHIRT(UNISEX) Size:L
SUGARCANE SHORTS(Men) Size:M
Socks:モデル私物