自然の中にいたほうが体にはいい それは簡単な原理 ARATA FUNAYAMA
ゴールデンウィーク前のある晴れた日、HERENESSのLOOK撮影のために長野県を訪ねた。そこでモデルをお願いしたのが船山改(あらた)さん、小諸市で暮らすアートクリエイターだ。ファッションの世界でパターンナーなどとして活躍した後、故郷の長野県に居を移し、現在は企業向けのデザインやコンサルティングをしながら、アート作品を生み出している。また双子の弟である潔(いさぎ)さんが、アウトドアメーカーのサポートも受ける本格的なクライマーということもあり、クライミングやスノーボードが生活の一部になっているそう。
そんな船山さんが、いま取り組んでいるモチーフが〈縄〉だ。
〈縄〉というモチーフとの出合い
「いろんなところから繋がってというか、まさに〈縄〉が繋がりそのものなんですけど。きっかけのひとつは(縄=ロープに命を預ける)クライミングをやっていたこと。もうひとつは、去年、鬱になってしまったことなんです。自分は何がしたいのかなって。お金もないし場所もない、何があるんだろうって。改めて考えた時に、周りの人だったり、仕事だったり、全てのものは繋がりの中にあると気づいたんです」完璧主義から、東京での生活では食事をとる間も惜しんで仕事に打ち込んだ船山さん。心と体のバランスが崩れたと感じたところで、故郷の長野に戻ることを決断する。豊かな自然に囲まれた小諸のログハウスに居を構え、静かな環境の中で作品の制作や新たな仕事、アウトドアアクティビティに打ち込むことで少しずつ目指すべきバランスが見えてきた。
自然の中にいたほうが体にはいい。それは簡単な原理
「小さい頃は軽井沢の自然に囲まれた環境にいて、遊ぶのも通学路も常に自然が身近にあって、全部が庭だった。自然が身近にあってそこから遊びも思いついた。色ひとつとっても自然の色って無限だなって思うんですよね。同じ色ってひとつもないと思うし、そういった自然の中で育っていた。
人間っていうのはそもそも動物なので、自然の中にいた方が体にも当然よくて、それは簡単な原理。木が出したものを僕らが吸って、僕らが出したものを木が吸ってくれている。全てのものは循環していて、そこに相反することっていうのは僕にとってもそうですし、今住んでいる地球にとってもよくないなってことに気づかされました」
そうした自然と調和してきた日本の文化に惹かれるという船山さんが、〈縄〉の持つ重層的な魅力についても解説してくれた。
「縄って実は二方向あるんですけど、それによって力が発揮されるっているのが縄文時代の考え方。そういう日本と関わりの深いものが縄なんです。そして一本の中にすごく細い糸が束になっていて、その糸も繊維が連なってできている。表面から見るとひとつに見えるんですけど、より複雑なものが積み重なって積み重なって、はじめてひとつに見える」
人との繋がり、そして自然との繋がりから立ち上がってきた〈縄〉というモチーフを船山さんは大事に育んでいる。
Art creator
Photography/design/pattern/edit/ideas