MORNING RUN WITH #002 YUSUKE OGURA

エネルギーや水分が枯渇している状態で体を動かすことで、効率よく追い込むことができる。小椋裕介選手

朝はランナーにとって神聖な時間。静まりかえった街に響くのは自らの足音と呼吸音だけ。自分の心と体にフォーカスし、日々の差分を確認する。季節の移ろいも光の変化も、一日のうちで最も顕著に感じ取ることができる。それもこれも、走るために早起きをしたからこそ。

そんなランナーにとっての特別な時間を共有させてもらう〈MORNING RUN WITH〉、第2回はハーフマラソン日本記録保持者で、2021年琵琶湖マラソンの記録によってマラソン歴代十傑へと名乗りを上げた小椋裕介選手。

 


自分はマラソンで戦える位置にいる

HERENESSが立ち上がってすぐのこと、インスタグラムのアカウントに意外な人物からフォローが入った。ハーフマラソン日本記録保持者の小椋裕介選手。海外のインディペンデントなスポーツウェアを自ら取り寄せて愛用するなど、実力とセンスを両立している小椋選手からのフォローにHERENESSスタッフは大いに沸いた。

そして、小椋選手の情報収集力と発信力に驚かされた。ぜひ小椋選手のSNSアカウント(twitter:@conboy0416 instagram:@yusuke_ogura1993)を覗いて欲しい。彼のあたたかな人柄と誠実な姿勢に魅了されるはずだ。 

その小椋選手が凌ぎを削る日本長距離界はいま収穫の時を迎えている。設楽悠太選手が2018年の東京マラソンで15年振りに日本記録を更新すると、8ヶ月後には大迫傑選手が新たな記録を打ち立てる。そして先日行われた歴史ある〈びわ湖毎日マラソン〉(残念ながら今回が最後の開催となった)では鈴木健吾選手がまさかの2時間4分56秒で新たな日本記録保持者となった。

その〈びわ湖毎日マラソン〉を2時間6分51秒という好タイムで駆け抜け、日本歴代マラソン十傑に数えられることになった小椋選手は、「優勝は狙っていました。まさか2時間6分台を出して優勝を勝ち取れないなんて思っていませんでしたよ」と、長距離界の高速化に舌を巻く。

ランニングの世界では〈ロジャー・バニスター効果〉という言葉がよく知られている。1954年、1マイル(約1.6km)レースにおいて人類が越えることのできない壁と考えられていた4分という記録をロジャー・バニスター選手が破ると、その後1年の間に23人もの選手が4分の壁を超えた。かように心理的な壁は高いということ。日本の長距離界も、心理的な壁が取り払われ、誰が新たな記録を打ち立ててもおかしくない、とてもエキサイティングな時代にある。  

その可能性の塊のような選手の一群の中に、小椋選手は確実に位置している。2020年の〈香川丸亀国際ハーフマラソン〉で打ち立てたハーフマラソン日本記録1時間ジャスト(なんと覚えやすい記録だろう!)は、フルマラソンの記録を目指す途中経過として生まれた副産物だという。

「マラソントレーニングの一環として走ったのが丸亀だったんです。マラソン後半の疲労をイメージするために、前々日にロング走をこなしていたくらい。重い脚でどこまでやれるかと思っていたところ、結果がでました」

これだけの金字塔を打ち立てていながら、小椋選手はあくまでも冷静だ。

「相澤選手や大迫選手のような有力選手がハーフの記録だけを狙っていったら59分30秒まではいけると思います。もちろん自分も60分が限界だとは思っていなくて、誰か一人が59分台を出したらドドッと到達する選手が増えるんじゃないかと思ってます」

現状を冷静に分析できているのは小椋選手の持ち味であると同時に、目標を高く置いているから。

「正直、東京オリンピック選考のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)は、まだ力がなく出られなかったですし、ファイナルチャレンジは大迫選手に持っていかれてしまった。ただ自分がマラソンで戦える位置にいるというのは強く感じているので、パリ五輪は絶対に出場したいですね。その前の世界陸上の権利も取りたいです」


ランニングは表現する舞台であると同時に人と繋がる共通言語

そんな小椋選手は彩湖にあるヤクルトのトラックで毎朝、厳しい練習に臨んでいる。朝走ることの効能について彼はこう捉えている。 

「できれば朝は寝ていたいんですけど、朝走ることには意味があって。朝はエネルギーや水分が枯渇しているんです。その状態で体を動かすことで、効率よく追い込むことができる。自分の体に必要なダメージを与えるのに効率がいいんです。気持ちとして楽に勝てるなら本当にそっちのほうがいいと思ってるんですよ。ただ、それができないからキツイことをやる。やらないと勝てないからキツイことをやっている。そういう気持ちで取り組んでます」

この言葉だけを取り出すとどこまでもストイックなのだと感じさせる。トップアスリートとして当然ではあるが、それだけではない。ランニングという行為をもっと大らかに捉えているところが、競技者を超えて小椋裕介を魅力的にしてる要因だ。

「走ることは仕事ですし、自分自身を表現する舞台です。それと同時に、走るということだけでいろんな人と繋がれるし共通言語になれる。ランニングってそんなところがいいなって思ってます」 

小椋裕介 身長174cm

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